2020. 9.15開催
2020.10.20視聴
国立教育政策研究所「令和2年度教育研究公開シンポジウム」
高度情報技術の進展に応じた教育
13:00 趣旨説明
 藤原文雄(国立教育政策研究所初等中等教育研究部長)
13:05 開会挨拶
   中川健朗(国立教育政策研究所所長)
13:10 パネル・ディスカッション
 「高度情報技術を活用した未来の教育と評価システム」
 ① 滝波泰 (文部科学省初等中等教育局教育課程課長)
 ② 桐生崇 (文部科学省初等中等教育局企画官・学びの先端技術活用推進室長)
 ③ 浅原寛子(文部科学省総合教育政策局調査企画課学力調査室長)
 ④ 白井俊 ((独)大学入試センター試験研究統括補佐官(兼)試験企画部長)

司会 
    中川哲 (文部科学省初等中等教育局「未来の学びコンソーシアム」
          プロジェクト推進本部 本部長代理)
13:40 基調講演
「テクノロジーが支援する評価システムの開発・実装に向けた
                    示唆的な概念としての『評価の三角形』
   James Pellegrino(イリノイ大学シカゴ校特別教授)
第一部  学習評価とは何か?
 またこれを正しく行うことは、なぜ難しいのか?

 教育アセスメントとは何か?
 なぜこれが必要なのか?

  評価とは、現在の状況について判断を下すことを目的とした情報収集プロセスである
教育評価においては、収集された情報は、おそらくは、将来的な成果を高める目的で、教師管理職、政策立案者、そして一般社会が、生徒が何を知っており、またどの程度よく知ってるかを推測するのに役立つように設計されている
こうした成果の中には、生徒の学習わ向上させるために教室内でアセスメントを用いるなど即時性の高いものもあれば、プログラムの評価のために評価を用いるなと゜効果が現れるものに時間がかかるものもある。

広範な教育システムにおけるアセスメントの位置づけ

教育評価はどのような機能や目的を持つのか?
 ・一般的に、教育アセスメントは複数の文脈で行われる。
   ・小規模:個々の教室
   ・中規模:学区 
   ・大規模:州、国、世界的規模

 ・こうした文脈内、分脈管において、異なる目的を達成するために利用することかできる
   ・学習支援(形成的)
   ・個人(あるいは集団)の達成測定(総括的)
   ・プログラムの評価(説明責任)

生徒の学習評価は、なぜこんなに難しいのか?
 我々にとって、生徒が知っていることを本当に知ることは不可能である。
 つまり評価とはね常に証拠から推論するプロセスなのである。

 評価の三角形
観察 解釈
認知
・認知
    生徒が学習領域の中でいかに知識を表現し、能力を伸ばすかという点に関する理論、モデル、およびデータ
・観察
 生徒のパフォーマンスの観察を課題や状況
・解釈
 エビデンスの意味を理解するための方法

領域認知の発達モデルがなぜ重要なのか
  評価すべき知識の重要な側面とは何か、教えてくれる・
そうした知識がどう評価てセ切るのか、あるいはどう評価すべきかについて強力な手掛かりを与えてくれる
指導面でより有用な情報をもたらす評価につながる
一貫性のある評価システムの開発につながる

覚えておいてほしい第一部のポイント
   評価とは、単純なものではなく、単一のものでもない。複数の目的を果たすため、複数の形態をとるものである。
評価は、カリキュラム・インストラクションめ評価から成る総合的な評価システムの一部である。
正しい評価の設計は非常に難しい。生徒が何を知るべきであり、どうそれを知るべきかについて、隆かな概念的基盤が必要である。
質問の出し方、そして解答の意味やその価値について何を期待するのかについて、よく考えておく必要がある。

第二部 評価システムのとは何か?
 またその設計において、私たちが考えるべきことは何か?


評価システムを定義する
 ・評価手法を寄せ集めてもシステムにならない
 ・レンガを積むだけでは家が建たないのと同じである(Coladarci 2002) 

 システムは意図した機能と解釈によるりようという面において、連続する要素から構成されなければならない

重要なシステム設計における特性と原則
・一貫性  システム内のさまざまな評価の基礎となる生徒の概念的学習のモデルは、矛盾のないようにすべきである。州あるいは学区レベルの評価のための概念的基盤は、よりきめ細やかな対応を行える教室レベルでも意味を成すような幅広い型のものにすべきである。
・包括性  教育における意思決定をサポートする様々なエビデンスを提供するために、幅広い測定方法が用いられる。単一の評価をもって、生徒の能力を決定的指標とするべきではない。
・連続性  生徒の進捗は、時間の経過を伴って測定する。時間の経過を伴った複数の観察セットは、変化の観察・解釈が可能になるよう、概念的に結び付けられる必要がある。学習における生徒の進捗モデルは、評価システム全体の基礎となるべきである。
 
 多層からなる評価システムの解説図解
 
総合的なシステム

・システムのレベル及び目的間に連携がある

・学習理論や研究、コンテンツスタンダードなどから得られる共通の学習目標で統一されている。

・期待される学習の軌跡をマッピングする進捗変数を統一することで同期される。

システム内の異なる評価はどのようにまとめられるべきか?
 □ 一般的に、望ましい完成形は、多層からなる評価システムである。
各レベルでは明確な機能を果てしており、表情報の対象となる利用者が明確である。
評価ツールは、意図した目的を果たすために設計されている。
   ・設計は提供される機能に合わせて最適化されている。
 □ 各レベルは明確で、概念的に一貫している必要がある。 
特定の学年レベルにおける学習目標が何であるか、達成エビデンスが何であるべきかという基本的な概念が共通している
行動に移すのに適切な「細やかさ」と「タイムスケール」で情報を提供している

第三部 教育評価及び評価システムの設計・利用におけるICTの役割とは何か?
 現在の多くの評価の限界(ICTの有無に関わらず)

  ・断片的な事実的知識についてのまとまりのない宣言的知識の重視
・数学。科学・歴史などの教科における統合された枠組み的(schematicな)知識構造の軽視
・手続き的アルゴリズム及びスキルの重視
・戦略的思考スキルの軽視と真正の(authentic)問題への限定的取り組み

評価の設計・利用のための テクノロジーのアフォーダンス

より幅広い範囲における認知スキルや知識の活用…「認知」の頂点
問題提示に関する従来の常識を超えて・・・「観察」の頂点
様々な課題設計と問題形式の実装・・・「観察」の頂点
行動の複雑な側面の記録およびスコアリング.…「観察」および「解釈」の頂点
生徒の成績の複雑な側面の分析・・・「解釈」の頂点
学習環境に対する評価の埋め込み・・・「評価」を「カリキュラム」および「インストラクション」に結び付ける

評価システムの設計とICT  
評価システムには、生徒の学習成果に関する望ましい推論を行うため に適切な課題、ツール、テクノロジーを用いる
すべてをひとつのテストや課題モデルに押し込んではならない
様々な課題の利用をサポートする(必要に応じて、パフォーマンス、 ポートフォリオ、プロジェクト、クローズドあるいはオープンエンド な反応を求める課題など) 
システム内の異なるレベルの異なるユーザーが実行に移すために適切 な「細やかさ」と「タイムスケール」で情報を提供する
ICTの利用は、評価結果を利用する者のニーズに応じて有用性や価値 (つまり “ROI")をもたらすべきである

評価ステムにおけるICTの「非力な」使い方

 評価対象、評価方法、情報の利用方法に実質的な変化は生じない
     

評価ステムにおけるICTの「強力な」使い方
 評価対象、評価方法、情報の利用方法に実質的な変化は生じる
   

「テクノロジーが支援する評価シ ステムの開発・実装をガイドする概念としての評価の三角形」
まとめとして .

テクノロジーが支援する評価システムの開発・実装のより良い未来に向けて
  「評価の三角形」のロジック(評価は証拠からの推論であると いう命題)がシステム上のあらゆる評価の設計をガイドすべき である
評価システムの構成要素は、教師、生徒、研究者、開発者、政 策立案者がそれぞれのニーズを考慮に入れて連携した上で設計 されねばならない
認知科学、学習科学、教科教育学、教育測定学、計算科学など 多様な学問領域の専門性が必要である
認知科学、学習科学、教科教育学、教育測定学、計算科学など 多様な学問領域の専門性が必要である
教室から学校、教育委員会、政府まで、様々なレベルにわたっ て一貫性を保てるよう設計されねばならない

最後に
先生方へ
:テクノロジーの利用は、単に採点などの負荷を軽減するためのものではありませ ん。どうすればテクノロジーと優れた評価設計が、より指導的に価値のある情報をもたらし、 形成的評価プロセスを支援することができるかという点に重点的に取り組んでください
EdTech開発者の方へ
テクノロジーの利用は、単により早くより低予算でテストや採点を 行うためのものではありません。どうすればテクノロジーと優れた評価設計が、限られた時 間の中で、より指導的に価値のある情報を教師やその他の教育者にもたらすことができるか という点に重点的に取り組んでください。
教育政策立案者の方へ:
テクノロジーの利用は、単により低予算のテストや迅速な採点のた めのものではありません。どうすればテクノロジーと優れた評価設計が、より確かな情報を システム内の全員にもたらし、教育システムを改善するために用いることができるかという 点に重点的に取り組んでください。

 
14:00 パネル・ディスカッション
「学習科学における評価とテクノロジー:『評価の三角形』の視点から」
 ① 益川弘如 (聖心女子大学現代教養学部教育学科教授)(兼司会)
 ② 寺尾尚大 ((独)大学入試センター試験評価解析研究部門助教)
 ③ 齊藤萌木 (東京大学高大接続研究開発センター特任助教)
14:40 テクノロジーフェア
 東京書籍株式会社
 株式会社リクルートマーケティングパートナーズ
 スズキ教育ソフト株式会社
 株式会社すららネット
 九州大学
 株式会社Study Valley
 東京大学 CoREF
 株式会社内田洋行
 大日本印刷株式会社
 光村図書出版株式会社
15:10 ビジョナリートーク
「学習環境のデザインと評価を支えるテクノロジー」
 ① 喜連川優 (大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構 国立情報学研究所長)
 ② 安浦寛人 (九州大学理事・副学長)※ビデオ放映
 ③ 上野耕史 (国立教育政策研究所教育課程研究センター研究開発部教育課程調査官
(併)文部科学省初等中等教育局視学官)
 ④ 奈須正裕 (上智大学総合人間科学部教育学科教授)
 ⑤ 白水始  (国立教育政策研究所初等中等教育研究部総括研究官)(兼司会)
16:10 全体コメント
  堀田龍也 (東北大学大学院情報科学研究科教授・中央教育審議会委員)
まとめ:GIGA後の教育への期待

1人1台情報端末の確実な整備:
 国の補正予算を十分に活用 した各自治体による100%の整備(確実な自治体負担)

クラウド・バイ・デフォルト:クラウド
 
活用が大前提、これを阻む自治体の条例等の至急の改正

教科書・教材のデジタル化
 促進:デジタル教科書等の良質な学習リソースの普及と,それらの有機的連携のためのデータ標準化, 学習動画や診断CBTの国による整備

学習ログの分析と活用:
 学習ログの収集, サマライズ, リフレクション支援, 指導の見直し, カリキュラム・マネジメント

SINETの開放と大学との連携:
 教育ビッグデータの分析研究や, AI等を活用した新技術の学校現場への大学の研究リソー スの活用

教員養成課程の実効的な改善:
  1人1台情報端末を活用した 学習経験を持った教員の養成,新科目設置だけでなくむしろ 既存科目の授業スタイルの改善
16:25 閉会挨拶
  佐藤安紀 (国立教育政策研究所次長)