2020.9.20
日本教育大学協会教育心理学部門シンポジウム
「『主体的・対話的で深い学び』を実現するための働き方改革のあり方とは」
司会
   冨田 英治 愛媛大学准教授

代長挨拶
   杉森 伸吉 東京学芸大学教授 日本教育大学協会 教育心理学部門代表

趣旨説明
   犬塚 美輪 東京学芸大学 准教授
話題提供 
 「働き方改革」と学び方改革
   市川伸一 東京大学名誉教授
新学習指導要領 (2017 小・中 2018 高)
  基本的には、前回改訂の流れ
   生きる力/習得・活用・探究/教授と活動のバランス
   より強調・拡張するためのキーワード
    社会に開かれた教育課程
    教科等横断的な資質・能力の育成
    主体的・対話的で深い学び

     ← アクティブ・ラーニングの視点
    深い理解、情報の精査と考えの形成、問題発見、創造
   カリキュラム・マネジメント

アクティブ・ラーニングの実例
 探究的なアクティブ・ラーニング
   生徒自身による課題の発見・設定、計画、実施
   協同的な探究活動、表現活動
    例) ThinkQuest、Researcher-Like Activity, ・・
 
 習得の授業におけるアクティブ・ラーニング
   生徒自身による説明活動、学び合い、教え合い
   協働的問題解決
   例) 学び合い、ジグソー法、反転授業、・・・
     「教えて考えさせる授業」の理解確認、理解深化


「教えて考えさせる授業」の提案
 「教えて考えさせる授業」 (市川、2001, 2004)
  「詰め込み」「教え込み」:旧タイプのわからない授業 input 偏重
  教えずに考えさせる授業:新タイプのわからない授業 output 偏重
  教えて考えさせる授業
     基礎知識は教え、思考・表現を通して深い習得を促す

 中教審答申 (2008年1月17日 p.18)
     「自ら学び自ら考える力を育成する」という学校教育にとっての大きな理念は、日々の授業において、教師が子どもたちに教えることを抑 制するよう求めるものではなく、教えて考えさせる指導を徹底し、基礎 的・基本的な知識・技能の習得を図ることが重要なことは言うまでもな い。」 (ただし、教材・教具の工夫、理解度の把握が必要)


新しい学習指導要領の周知におけるポイントについて
       (2017年11月13日中教審教育課程部会 資料)  
 □「主体的・対話的で深い学び」の視点からの授業改善について
 〔ポイント〕
   ・単元・題材のまとまりなどを見通して、「教師が教える」場面と
    「児童生徒に考えさせる」場面など、全体のバランスをとる
    「授業デザイン」が重要。
   ※「教師が一方的に教えてばかりの授業」も
     「教師が教えずに児童生徒主体の活動ばかりの授業」も、
     いずれもバランスを 欠くおそれがある。

教えて考えさせる授業とは




学校の取り組みの成否
  うまく導入するための要件
    推進リーダーとそれを支える管理職
    実践を日常化・活性化するしくみ (授業構想シート、三面騒議法)
    他の実践校・実践者との交流 (視察、セミナー参加)

   児童・生徒の変化

   「働き方改革」の中でのOKJ
    多忙な中での省力化、効率化をどう図るか
    予習や自己評価のチェックの簡素化
    教師の説明における板書の省力化、
    教材・教具のファイル化
    理解深化課題のリソースの活用、情報共有、アイデア交換
    「学び方改革」を進めることで、教師の「働き方改革」へ

 「教えて考えさせる授業」を受けてきた中学3年生のアンケート記述例

この形の授業とそうでない授業では、1日のうちに頭の中にはいる量が違うと思います。私はこの形にすることで、次の日にも大まかな内容を覚えておくこと ができました。

この形に変わってからは、自信がつくようになりました。理解確認や理解深化でペアの人に自分の意見を言い、納得してもらえたからです。自分の意見を言うこ とや他人の意見を聞くこともできるようになりました。

先生の説明を聞くだけではわからないので、自分で説明することは自分の理解力を高めることにつながっていると思います。

わからない部分がどこなのか、自分でよくわかるので苦手をなくしやすいです。 またインプットとアウトプットが一回の授業でできるし、周りの人と確認しあえるの がいいと思います。

理解確認だけでなく、理解深化があることで、学んだことがどう関係しているかを考えることができたと思います。様々な視点からの考え方が生まれていたと思 うのでよかったです。

表面だけで理解するのではなく、他の人と話し合ったり、書いたりすることで、理解を深め、新たな疑問を持つなど、より発展的なものにつなげることができた 思います。

自己評価があるので、わかったところとわからないところが自覚できていいと思います。

勤務校の「働き方改革」
 従来の問題点
  勤務時間の大幅な経過、字遊行日数、授業準備
  進学実績向上のための教師負担、小テスト、個別指導、夏季講習
  学校の広報活動、保護者向け、塾向けの学校説明会
  
 超勤手当ての遡及的支払い

 勤務体制の見直し
   就業規則の改訂と教員の合意
   教員の退出時間の徹底、休暇取得の奨励
   部活時間、生徒の下校時刻の厳格化
話題提供
 教師の視点に立った働き方改革に向けた調査
                  小学校教員の危機感と期待
   品田 瑞穂 東京学芸大学 准教授
小学校教員の働き方改革に関するプロジェクトの紹介
 1.背景・目的
 2.公立小学校での調査の概要
 3.小学校教員の働き方と「主体的・対話的で深い学び」

働き方改革に対する小学校教員の捉え方(調査の結果)
 ◼ 新しい取り組みを始めるには余裕が必要では?
   →人、予算、ノウハウがない
 ◼ 業務の削減・効率化の指針は示されているが、実現可能性は?
   → 各自治体による具体的な指針と、指針に基づく支援が必要
 ◼ トップダウンの改革に対する反発は?
   →むしろトップが指針を示すことへの要請が強い
 ◼ 教育の質の低下や、保護者から理解を得られないことへの不安は?
   →不安を持つ教員もいるが、意見は割れている(共有が必要)
 
「働き方改革と『主体的・対話的で深い学び』の有機的な結びつき」には
  何が必要か?

 ◼ 主体的に考える時間がとれるよう、働き方改革に向けた具体的な支援が必要
   人、予算、ノウハウ(例:改革モデルの提案、モデル校での分析)
 ◼ 教員・保護者・地域の意識の共有 教員の現在の働き方を見える化する
 
話題提供
 引き算の発想ができるか
    尾見康博 山梨大学 教授 
話題提供の要点
  • 部活の現実から見えること
  • 両立させることより減らすこと
  • 「楽をすること」への抵抗を捨てられる
パネルディスカッション
  パネラー
    市川伸一 東京大学名誉教授
    品田 瑞穂 東京学芸大学 准教授
    尾見康博 山梨大学 教授
  
  指定討論者
    杉森 伸吉 東京学芸大学教授