2020.9.4
第6回 子ども発達支援研修会
~発達支援の基本と最新の話題~
一般社団法人こども発達支援研究会 前田 智行 先生
発達障害とは
 
法律的な解釈(発達障害者支援法)
「発達障害」とは、自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他のこれに類する脳機能の障害であって、その症状が通常低年齢において発現するもの。
「発達障害者」とは、発達障害がある者であって、発達障害及び社会的障壁により日常生活又は社会生活に制限を受けるもの。
 
 ◆脳機能の障害です
  →身体や心に問題はありません、子育ての問題でもありません
 ◆低年齢から症状が見られます
  →大人になってから発達障害にはなりません
 ◆症状のせいで今困っています
  →困っていなければ診断する必要はありません

 発達障害(神経発達症)
   ADHD(注意欠如多動症)、DCD(発達性協調運動症)、SLD(限局性学習症)、
   チック(トゥレット症候群)、吃音症、アスペルガー症候群、ASD(自閉症スペクトラム)
   MR(知的発達症、知的障害)、PDD(広範性発達障害)、コミュニケーション症(言語症、語音症)

 精神病性障害
  愛着障害、選択制緘黙(場面緘黙)

 未分類(心理学用語)
  ADP(聴覚情報処理障害)、HSP(高度感覚処理感受性)、HSC(高度感覚処理感受性児)
通常学級に在籍する特別な教育的配慮が必要な子ども
   ASD(自閉症スペクトラム)
   ADHD(注意欠如多動症)、かつては注意欠陥多動障害と言われていた
   SLD(限局性学習症)
ASD(自閉症スペクトラム)とは
 
代表的な3つの症状
  社会的困難・・・コミュニケーションの障害(空気が読めない、対人関係が築けない)
  こだわり・・・・・・興味行動の限定(特定のものへのこだわり、儀式的行動)
  感覚の困難・・・感覚過敏(鈍麻)(触覚過敏、視覚過敏、聴覚過敏など)

 最近の研究で
  支援者のニーズ⇒社会性の障害
    ◯社会適応(対人関係等)
    ◯行動技能(パニック等)
    ◯社会技能(マナー等)
       (Autism Speaks)「自閉症を歴史の本の言葉に」
    「どんな家族も自閉症と暮らす必要がなくなる世界を」
  
  当事者のニーズ⇒身体機能の障害
    〇アレルギー
    〇意図しない身体の動き
    〇胃腸の不調
    〇感覚に関する過敏
        (ANI,2000)「自閉症の人々は人と関わる独特のスタイルをもっているだけ」

  支援者と当事者との違い
  人は自分の感覚で物事を考えてしまう
  寄り添うのは難しい
 
  自閉症の共感性(京大:米田英嗣)
   自閉症の子を定型発達の集団の中に入れると、共感できない
   自閉症の子を自閉症の集団の中に入れると、共感的振る舞いができる
             Komeda, H. et al.2014 Autistic empathy toward autistic others.

  ASDの他因子モデル
社会性の障害 こだわり 感覚の困難
空気が読めない
一人が好き
指示が通らない
皮肉が伝わない
目が合わない
表情が読めない
興味が偏っている
人に興味を示さない
同じ手順にこだわる
スケジュール変更を嫌がる
他人のペースに合わせられない
同じ服を着たがる
チクチクした服を嫌がる
お風呂を嫌がる
甲高い音を嫌う
動くものに注意を奪われる
偏食
匂いに敏感
               ASD症状×周囲の環境⇒障害か個性かが決まる
 
   症状についての知識を持つ

ブレークアウトタイム
 
ADHD(注意欠陥多動症)
3つの主症状
   不注意・・・ケアレスミスをする、注意散漫
          整理整頓が苦手、忘れ物が多い
      ワーキングメモリが低い→複数の情報の記憶の保持ができない
        ⇓
      情報が抜けが多くなる→マルチタスクが難しくなる

   多動性・・・手足がもじもじしている、机に座っていられない
          おしゃべりが止まらない、静かに遊べない
      「じっとしていられない」という特性
      実行機能のワーキングメモリの低下
      (新しく入った情報を優先し、古い情報を保持できない)
       ⇓
      目の前のものに反応し続ける

   衝動性・・・順番を待てない、人の列に割り込む
          突然怒る、相手の質問中に答える
      「我慢できない」という特性
      実行機能の自己抑制機能の低下
       ⇓
      我慢できずに行動してしまう
3つの型
 不注意優勢型・・・・・・女性に多い、大人のADHD(のび太タイプ)
               適切に注意を向けられない、集中が続かない
 混合型・・・・・・・・・・・約60%が該当
 多動衝動性優勢型・・高学年で約半数が、寛解する(ジャイアンタイプ)
               じっとしていられない、我慢ができない
ADHDの併存症状
   (米国6〜17歳までの子供がいる一般家庭約6万人を対象とした調査)
ADHD診断あり
(n=5,028)
ADHDなし
(n=56,751)
L D(学習障害) 46% 5% 9倍
素行症(行為障害) 27% 2% 13倍
不安障害 18% 2% 9倍
うつ 14% 1% 14倍
出典:Merikangas,KR.,et al.Prevalence and treatment of mental disorders
among US children in the 2001-2004 NHANES. Prediatrics,125:75-81,2010
ADHDへの支援〜(現場から見た)薬物療法
  コンサータ(メチルフェニデート)・・・中枢刺激薬、多動衝動性の強い子
                        副作用強め(食欲低下)
  ストラテラ(アトモキセチン)・・・・・・ 非中枢刺激薬、不注意傾向が強い人
                        睡眠障害併発の人、副作用弱め(気持ち悪さ)
  インチュニブ(グアンファシン)・・・・ 非中枢刺激薬、衝動性他害傾向のある子
                        副作用弱め(低血圧)2019年7月に成人適応開始
薬物療法〜暴れる子ども〜
 覚醒が高い状態・・・いわゆる「躁」の状態 → 抑清心役で覚醒を下げる 
 覚醒が低い状態・・・ADHDの多動衝動性の状態→ADHD薬で覚醒をあげる
SLD(限極性学習症)
 日本には、2つの基準
   文科省の判断基準(1999)
      1、学力に個人内差がある
      2、中枢神経に機能障害がある
      3、他の要因で説明できない
     読む,書く,話す,聞く,計算,推論の困難が1つ以上存在し6ヶ月持続している

   医学の診断(DSM-5)
      1、読み書き障害(ディスレクシア)
      2、書字障害(ディスグラフィア)
      3、算数障害(ディスカリキュリア)
SLDには
   発達性読み書き障害(ディスレクシア)・・・音韻の困難(文字と音が一致しない)
                              視覚機能の困難がある
   発達性書字障害(ディスグラフィア)・・・・・ 音・イメージから文字が浮かばない(想起の困難)
                              順序性の困難(記憶力・計画性の困難)
                              字を書けない(手先の困難)
   発達性算数障害(ディスカリキュリア)・・・・数概念の困難(数とイメージが一致しない)
                              ワーキングメモリの不足(暗算できない)
                              量感の未形成(空間認知能力の困難)
個人間差から個人内差へ
    子ども同士の能力の差を見る⇒その子の持っている能力の差を見る

  WISC-IV・・・・言語理解、知覚推理、ワーキングメモリ、処理速度
  K-ABC-Ⅱ・・ 継次尺度、同時尺度、計画尺度、学習尺度

  例 知的障害の子の場合 Yくん、10歳 【診断】知的障害 【知能検査】IQ60
     視覚処理能力・同時処理能力=6歳    聴覚処理能力・継次処理能力=6歳
     全般的に知能が遅れている知的障害の場合は、発達年齢に合わせて
     勉強を教えていくことがセオリー

  例 SLDの場合   Dくん、8歳  【診断】ADHD,LD 【知能検査】IQ95
     視覚処理能力・同時処理能力=6歳相当  聴覚処理能力・継次処理能力=10歳相当
     能力に凸凹のある発達障害は、得意な能力を活かして勉強した方が学習が有利に進む

学習支援の二つの意義
   学習の遅れのカバー
      →自己肯定感の回復
      →将来の可能性を広げる

   二次障害の予防
      →反抗挑戦性症、素行症の予防