2020.8.21
第11回 子ども発達支援研修会
~ADHDの基礎的知識と支援~
一般社団法人こども発達支援研究会 前田 智行 先生
ADHD(注意欠如多動症)とは?
通常学級に在籍する特別な教育的配慮が必要な子ども
   ASD(自閉症スペクトラム)
   ADHD(注意欠如多動症)
   SLD(限局性学習症)
前頭前野の活動不全〜Dual Pathwayモデル〜

 実行機能障害・・・・例 よっぱらったのりすけさん
   ◯自己抑制
   ◯ワーキングメモリ(計画性、認知能力)
 報酬系機能障害・・・例 両津勘吉
   ◯長期的利益より、短期的利益を優先してしまう。

3つの主症状
   不注意・・・ケアレスミスをする、注意散漫
          整理整頓が苦手、忘れ物が多い
      ワーキングメモリが低い→複数の情報の記憶の保持ができない
        ⇓
      情報が抜けが多くなる→マルチタスクが難しくなる

   多動性・・・手足がもじもじしている、机に座っていられない
          おしゃべりが止まらない、静かに遊べない
      「じっとしていられない」という特性
      実行機能のワーキングメモリの低下
      (新しく入った情報を優先し、古い情報を保持できない)
       ⇓
      目の前のものに反応し続ける

   衝動性・・・順番を待てない、人の列に割り込む
          突然怒る、相手の質問中に答える
      「我慢できない」という特性
      実行機能の自己抑制機能の低下
       ⇓
      我慢できずに行動してしまう
3つの型
 不注意優勢型・・・・・・女性に多い、大人のADHD(のび太タイプ)
 混合型・・・・・・・・・・・約60%が該当
 多動衝動性優勢型・・高学年で約半数が、寛解する(ジャイアンタイプ)

ADHDの子の割合
  アメリカ 3〜5%(一部7〜9%という研究もあり)
  日本   5〜7%(秋田市大仙市教育委員会調べ)・・・単純計算すると500万人
    これらの60%が引き続き大人までADHDをもつ
ADHDの併存症状
   (米国6〜17歳までの子供がいる一般家庭約6万人を対象とした調査)
ADHD診断あり
(n=5,028)
ADHDなし
(n=56,751)
L D(学習障害) 46% 5% 9倍
素行症(行為障害) 27% 2% 13倍
不安障害 18% 2% 9倍
うつ 14% 1% 14倍
出典:Merikangas,KR.,et al.Prevalence and treatment of mental disorders
among US children in the 2001-2004 NHANES. Prediatrics,125:75-81,2010

 他の障害を併存する率が高い
  睡眠障害もある
発達障害児はいじめられやすい?
 のび太タイプが被害者側になりやすい
診断基準
① 不注意症状
 a 細やかな注意ができず、ケアレスミスをしやすい。
 b 注意を持続することが困難。
 c 上の空や注意散漫で、話をきちんと聞けないように見える。
 d 指示に従えず、宿題などの課題が果たせない。
 e 課題や活動を整理することができない。
 f 精神的努力の持続が必要な課題を嫌う
 g 課題や活動に必要なものを忘れがちである。
 h 外部からの刺激で注意散漫になりやすい。
 i 日々の活動を忘れがちである。
②③ 多動性/衝動性の症状
 a 着席中に、手足をもじもじしたり、そわそわした動きをする。
 b 着席が期待されている場面で離席をする。
 c 不適切な状況で走り回ったり、よじ登ったりする。
 d 静かに遊んだり余暇を過ごすことができない。
 e 衝動に駆られて突き動かされるような感じがして、じっとしていることができない。
 f しゃべりすぎる。
 g 質問が終わる前にうっかり答え始める。
 h 順番待ちが苦手である。
 i 他の人の邪魔をしたり、割り込んだりする。
「①が6つ以上(17歳以上は5つ以上)」or「②③が6つ以上(17歳以上は5つ以上)」
+症状が12歳以前に出ている+6ヶ月以上の持続+2つ以上の場所+社会性に困難を抱えている
  症状が12歳以前に出ている
  DSM-IVでは、7歳以前
    ⇓
  症状があるのは覚えているが、証拠が集まりにくい
     →DSM-5で12歳以前に改訂
  6ヶ月以上の持続
    脳機能の困難なので、一過性のものではなく、継続して見られるはず
  2つ以上の場所で見られる
    脳機能の困難なので、場所を問わず症状が見られるはず(愛着障害との鑑別の視点)
  
  例)学校では多動だが家ではおとなしい=学校に課題がある

ADHD(注意欠如多動症)の支援
神経伝達物質の活動不全
  ドーパミン→楽しい、興奮する
  ノルアドレナリン→緊張する、集中力
  セロトニン→安心、幸せ
 
  ADHDはドーパミンとノルアドレナリンが不足している
  →注意力を高めたり、コントロールすることができない
ADHDへの支援〜環境設定〜
 ・刺戟を減らす

ADHDへの支援〜運動〜
 ADHD症状の原因→ドーパミン、ノルアドレナリンの不足
 運動は、 ◯ドーパミン(興奮、快の感情)
        ◯ノルアドレナリン(緊張)      を放出して症状を和らげる。

 支援(授業など)に運動を組み込む

(現場から見た)薬物療法
  コンサータ(メチルフェニデート)・・・中枢刺激薬、多動衝動性の強い子
                        副作用強め(食欲低下)
  ストラテラ(アトモキセチン)・・・・・・ 非中枢刺激薬、不注意傾向が強い人
                        睡眠障害併発の人、副作用弱め(気持ち悪さ)
  インチュニブ(グアンファシン)・・・・ 非中枢刺激薬、衝動性他害傾向のある子
                        副作用弱め(低血圧)2019年7月に成人適応開始
薬物療法〜暴れる子ども〜
 覚醒が高い状態・・・いわゆる「躁」の状態 → 抑清心役で覚醒を下げる 
 覚醒が低い状態・・・ADHDの多動衝動性の状態→ADHD薬で覚醒をあげる
依存症のメカニズム
 依存症の原因
   覚せい剤・薬物、たばこ、ギャンブル、アルコール、ゲーム・スマホ、お菓子・コーヒー
   インターネット、窃盗(クレプトマニア)、恋愛、仕事・お金(借金)

例えば・・・アルコール依存症の場合 
  50のドーパミンで集中できる人が、お酒が好きなので飲酒を繰り返す
  →80のドーパミンが普通になる
  飲酒時(80の状態)が増える
  →平常時のドーパミンは50なので、30の分だけ集中できなくなる
  →集中できない(楽しくない)ので、さらに求めるようになる
  ⇒依存症
ADHDの人の場合
   ADHDの人は、ドーパミンが不足しているので集中力が低い状態 
   ⇒ドーパミンが出るものに反応しやすい
   →依存症になりやすい
   ⇒依存性の高い物の危険性を伝える そもそも近づけない
ADHDは発達が3年遅れている
   多動衝動性は「待つ」という選択肢を持てるかどうかが大事になる

   前頭前野の活動不全
   
   大脳辺縁系=本能
   前頭前野=理性
  
 思春期
    ◯生殖行動が可能になる
    ◯本能が強いと生殖に至る確率が上がる
  理性が育つと改善する
  バランス
 ADHDの子ども
   理性が追いつくのが遅い
 
ADHDへの支援〜集中できない〜
  ADHDの子は、刺激を与えて脳を活性化すると、集中力が保ちやすい
    ⇓
  手で何かイジリながら勉強することで効率が上がる
    

ADHDへの支援〜姿勢が悪い子〜
  ADHDの子には姿勢が正しく取れない子が多い(DCDの合併率が高い)
    ⇓
  姿勢を補助する道具を活用することが効果的
    

ADHDへの支援〜時間を守れない子〜
  ADHDを抱えている人は、時間の感覚が短い人が多い(実際の時間より、体感速度が早い)
    ⇓
  時間の見通しが持てるタイマーや時計を活用する
  

ADHDへの支援〜カウントダウン〜
  ADHDの人は、緊張感を司るノルアドレナリンの機能が低い
    ⇓
  「残り何秒!(何分)」のような、カウントダウンは緊張感を高めノルアドレナリンが
  刺激されるので、切り替えが早くなる

ADHDへの支援〜後報酬を拒否する子〜
  後で〜するからやろう!「勉強終わったら、おやつね!」などの後に渡す報酬が効かない子
    ⇓
  衝動性が強い(報酬系が弱い)子は、「〜した後に報酬」という方法が通じない子がいる。
    ⇓
   後で報酬にしても、衝動性があるため特性的に待てない
     ⇓
   先に分散した報酬を与える。その後で活動を入れる
     ⇓
   徐々に、活動の感覚を伸ばしていく