不適応行動から適応行動へ
~慢性的危機からのサルベージ法~
臨床心理士・スールカウンセラー 石川泰輔
 現在、学校においていわゆる不適応行動をとっている子が見られます。
 その子の背景をみると、その子の親が未熟である場合が多くように思われます。自分のことしか見えていないのです。
子どもの内的感度への鈍さがみられます。
 服装などはきれいです。かつてのように、袖に鼻がついている等という子はいません。しかし、心が満たされていません。
 認められる経験が少なくなっています。自己肯定感が欠如してしまっています。
 かつては学校で傷ついても他の場所で癒されました。人間はどこかでバランスを取らないとやっていけないのです。
 子どもは、学校で体罰を受けた場合、心が傷つきます。家でも傷ついている子どもは、ダブルで傷ついてしまうのです。
 今の子どもは、傷ついて学校に来ているのです。そこで体罰を受けるとダブルで傷ついてしまうので、体罰はダメなのです。
 危機に対する基本的な姿勢は「成長と学習の機会」と捉えることです。自分や周囲に対する肯定的な感覚や態度を育む、主体性を育む、周囲と適切な関係を構築する、というような様々な適応能力を促進する機会ととらえるべきなのです。
 子どもの自己肯定感を高め、ストレングスを伸ばす姿勢が大切になります。
 危機に陥っていたり、問題行動を起こしていたりする子どもに対しての支援・指導方法としては、次のようなステ―ジを踏むとよいと思います。
Stage1 思いや感情を出し切らせる
 大人に対する不信感や敵意を表明されることが多いので、こちらの報復的感情に注意する。
Stage2 子どもの視点で事態を説明させる
 
その子の主観的解釈であることは留意しつつも、批判的コメントを避ける。
Stage3 中心的な課題を特定する
 
その子の感情、言い分に基づいて、当該の事態を引き起こす行動パターンを特定し、フィードバックをする。
Stage4 状況と行動パターンを一緒に検討する
 行動パターンを自覚させる。ただし、受け入れることを強要しない。
Stage5 新しい方法を見つけていく
 
変化へのモチベーションを持続させつつ、新たな方法・スキルを一緒に検討する
Stage6 実践に活かす

 場面場面で実践させ、成果を一緒に検討する
 現場に現れている結果だけを裁くのではないのです。
 子どもの自己肯定感を高め、ストレングスを伸ばす姿勢が大切です。悪いことをしている自分を否定しなさい。良くない状態にいるということを示すのではないのです。
 危機的状況を成長の機会ととらえることが必要です。そのためにはポジティブなアプローチが大切になります。
 よく、先生方は子どもに「自分のいいところを捜しなさい」という場面がありますが、不適応行動をとる子の多くは、「いいところなどない。」と言います。いいところはあるけれど、いいところを見つけることができないのです。
 危機に入っている子にとっては、その方法は、何のすくいにもなりません。
 自己肯定感を高める教育とは、自己肯定感や自信を持たせるのがゴールではなく、すでにその子が持っているものを認め、尊重しつつ、それらを活かしながら新たな力を獲得させることだといえます。
 いうなればゴールは、その子のよさを捜さなくても見えてくるものです。
 「よいところを見る」と言われますが、探してみるのではありません。見られる立場に立つと、何かを探されて、嬉しいものではありません。
 「よいところを見る」というと、「よいところ」が概念形成されてしまいます。つまり規準枠としてきてしまうのです。自分の基準で自分を見るならばそれでいいのですが、危機的な状況に置かれいる子を見た場合、その子は、離反してしまいます。
 自己肯定感を育むアプローチは、「あなたはすでにいろいろなものを持っている。それを活かせば今よりもよくなる。」というものです。「あなたは〇〇と言った良いものを持っている。だからそれを活かしなさい。(なければ身につけなさい)」というような特定の評価基準を前提にしてはならないのです。
 悪いところを改めることが教育だとする考え方(矯正教育)がありますが、学校現場では上手くいったというデータはありません。
 危機的状況の中の子どもの中に攻撃性の高い子どもがいます。最近は暴れなくなっています。他人を怪我させてはいけないという傾向が強く、自分破壊しかなくなってしまっています。
 社会全体がストレスを発散する場がなくなってきています。すると、引きこもりが増えるのです。
 「自分の問題は自分の問題。」「信用できる人はいない。」となるのです。
 外の人間でも対応できる信用できる人材が必要になるのです。
 問題を抱えているのは、実は親です。特に30代~40代の親の皆さんです。人間不信が大きいようです。
 子どもの問題をスタートラインとして受け止め、その子の持っているもの全てをストレングス(となりえるもの)としてとらえるように働きかけることが大切になってきていると思います。