生活科教育研究会 第27回全国大会 基調提案
『響き合う生活科授業の創造』―「子どもから引き出す」教師の構え―
生活科教育研究会 研究部
一 はじめに
 生活科教育研究会は、生活科が全面実施となった前年の平成三年に発足しました。その後、総合的な学習の時間を研究対象に加えてからも、生活科に込められた初志を大切にしていこうと、発足以来「生活科教育研究会」という名称を継承しています。
 新学習指導要領では「資質・能力の育成」「主体的・対話的で深い学び」「社会に開かれた教育課程」「カリキュラム・マネジメント」等をキーワードに進められています。
 本会では、その動向を的確に把握しながらも、実践に表れる子どもの姿や語られる言葉を大切にして理論を構築し、それを実践の中で検証していくことを大切にしています。
  さて本会では、第25回大会で「響き合う生活科授業の創造」を研究テーマに掲げて三年日を迎えます。27年度はこれまでの提案を整理した上で、「響き合う授業」に共通して見られる「教師の構え」とその手立てに焦点を当てて、基調提案をいたします。
二『「響き合う授業」の目指す学びの姿と教師の支援』
 本会では、「響き合う」授業における学習対象の視点として、
①身近な人(友達、教師、学校や地域の人、家族、GTなど)
➁身近なモノ(主な学習対象、学習環境など)
③身近なこと(事象、生活科等での学習経験、生活経験など)
 の3つを掲げてきました。
 生活科の「響き合う」授業の「学びのプロセス」として、
A 対象との関わりの中で心を揺さぶられる経験をし、
 B 「こうしたい―」などの思いや願いが生まれ、
 C 対象への応答を繰り返すことにより、
 D 対象との関わりが深くなっていくこと。
の4つを考えてきました。
 そして、このような「学びのプロセス」を仲間とともに生み出し、互いの考えを紬ぎ合っていく一連の姿を、「響き合う授業」の目指す学びの姿と捉えてきました。
 また昨年度は、「響き合う授業」に求められる教師の役割を「教師の
行為」とそれを支える「教師の思考」の側面から分析し整理しました。
「響き合う授業」における「教師の行為」
〇単元や年間カリキュラムなどの大きな構想を描く「デザイナー」としての行為
〇単元や一単位時間の展開を考え、必要な人的・物的な学習環境等を整える「コーディネーターとしての行為」
〇子どもの活動を即座にみとって判断し、学びの広がりや深まりが生まれるように適切に支援する「ファシリテーターとしての行為」

「教師の行為」を支える「教師の思考」
〇子どもの体験の様子や表現した言葉などを的確に把握し、その意味や関係性を解釈する「みとる思考」
〇解釈したことを基にして、この先にどのような学びや育ちがあるかを想定する「見とおす思考」
〇想定したことを基にして、どのような行為が子どもにとって適切かを判断する「みさだめる思考」
これらの整理は、教師が「行為から思考へ」「思考から行為へ」と判断を往還させながらその支援の手立てを決定し、子どもに関わっていく姿を明確にするものとなりました。
三「響き合う授業」における教師の構えとその手立て
「響き合う授業」を実現している実践には、授業をつらぬく大切なものとして「子どもから引き出す」教師の構えがあり、それを具現化するための授業の手立てがあります。今年度はそこに焦点を当てて、「子どもから引き出す」手立てを次の7つに整理しました。
〈「子どもから引き出す」7つの手立て〉
①一人一人の思いや考えを聴き合う関係をつくっていく
②思いや願いを高めて子ども自らの動きや発言を待つ
③子どものつぶやきや言葉を拾い、全体の場につないでいく
④表出した行為や言葉の自覚化を促す言葉がけや、考えや願いの
出を促す問いかけ
をしていく
⑤互いの気付きを交流し、気付きを捉え直す場を設定していく
⑥板書や思考ツールなどを用いて活動や思考の視覚化を図っていく
⑦振り返り書かれたものなどから思いや願いをつなぎ、次の活動や展開の方向性を探っていく
【実践例】「かぞく ばかぽか 大さくせん」(生活科・一年)
この実践は、友達と互いの良いところを見つけ合う人権学習の中で出された「友達によいところをたくさん見つけてもらつて、心が『ぽかぽか』になった」等の感想から、家族の「ぼかぽか」について見つけたり伝え合ったりする場を設定していこうと考え、取り組んで行きました。
 まず、「家族にしてもらつていること」をカードに書き出し、家族ぽかぽかの本に貼っていく活動を行いました。(⑥⑦)
 すると、お友達に教えてあげたい」という声が上がりました。
②③の動きや発言を待つ・拾うです)

 そこで、とっておきの「ぽかぽか」を伝え合う場を設定しました。 
⑦の次の活動や展開の方向性を探るです

 さらに、子どもたちは「冬休みに、もつと家族を『ぽかぽか』にしたい」
と盛り上がりました。
 ②③の動きや発言を待つ・拾うです。

 そして「冬休み家族ぽかぼか作戦」がはじまりました。⑦です。
 ここで大きな課題に直面しました。家族単元では、最初の段階での個人差が大きいのです。ここでは④になります。
 自分なりの作戦を家族の「思い」にしたいという教師の思いがあります。
 そこで、「とっておきの作戦」を紹介する場を設定しました。⑦です。
 その際、、、互いに友達の作戦をよく聴き合います。①⑤です。
 すると、「家族のことを『よく見て』『よく聞いて』『よく考える』と、家族のことを『ぽかぽか』にすることができる」という新たな気付きを生み出すことができました。
 冬休み後に作戦を振り返る時間では、各自が家族の役に立つことができた喜びを語りあいました。⑤⑥です。
 その中で、A児は、「作戦をしたら、私のまわりに『ぽかぽか』が集まってきました」と話しました。
 すると、その発言に共感が生まれました。
 さらに「『嬉しい』とか一楽しい』とか、いろいろな気持ちが自分の中に入ったとき『ぽかぽか』は誕生するのです」というB児の発言につながっていきました。
 振り返りカードでは、「『よく見て』『よく聞いて』『よく考える』と家族のことを『ぽかぽか』にすることができる」の視点に戻って子どもに働きかけ、次の活動につなげていました。④と⑦です。
 さらに子どもたちは「もっともっとぽかぽか大作戦をしよう」と盛り上がりました。
 そこでは、相手にぴったり合う作戦をしようとなりました。➁と③です。
 子どもたちは、その後も作戦をしては振り返り、また作成をしては振り返ることを繰り返しました。⑤⑦です。
 そして、お家の方と手紙でありがとうの気持ちを伝え合う活動を行いました。⑦です。
 この活動を通して、 「大切な誰かを思って自分が何かをすると、相手が喜んでくれる。相手が喜んでくれると、「自分も喜びを感じることができる」ということを学んでいきました。
 カードには、『「ありがとう、やさしいね。」といつてくれたので、じぶんもぽかぽかになりました。』と書いていました。
 そこで教師は、「かぞく一人一人ぴったりのさくせんをみつられてすごいね!」「おにいちゃんをよくみているね!」と赤を入れました。
  私たちは、「響き合う授業」を実現している実践から授業をつらぬく大切なものとして、「子どもから引き出す」教師の構えと、「響き合う授業」を具現化するための七つの手立てを導き出しました。
 今大会も、「響き合う生活科・総合的な学習の時間の授業」をめぐって
子どもたちのためにその質を高めていくことができるよう、実りある二日間にして行きたいと思います。