第26回 生活科教育研究会  全国大会基調講演 
 “今求められる生活科・総合的な学習の時間”
 文部科学省教科調査官     田村 学先生
 現在、文部科学省では、次の学習指導要領改訂に向けて、情報提供しています。今までにない形で出しています。
 8月1日に中間まとめがありました。8月6日には、文部科学省のweb上にアップされました。
 今では最新の情報が手に入れられるようになっています。
 これは、次の改訂に向けて、準備できることはできることをやってもらいたい。また共々に議論する場を設けていきたいということなのです。予定では8月中に、審議のまとめ案が示されます。
 生活科においては、幼児教育、他教科との連携、三年生以上との接続などが大切になります。スタートカリキュラムの中心となるのが、生活科です。次回の改定では総則の中に示される予定では。
 きちんと実施していくことが大切です。
 総合的な学習の時間は、これまでの10年間の成果を生かして、探究モードが大事になります。10年前は、そんな状況ではありませんでした。今にもなくなってしまうような感じでしたが、今ではむしろ充実の方向に向かっています。
 外国語についても充実の方向です。高校では、総合的な探究の時間となる方向です。大学入試改革と併せて、改訂が進められていく方向です。
育成すべき資質・能力の三つの柱
学びを人生や社会に生かそうとする
学びに向かう力・人間性等の涵養
どのように社会・世界と関わり、
よりよい人生を送るか
「確かな学力」「健やかな体」「豊かな心」を
総合的にとらえて構造化
何を理解しているか  
何ができるか
理解していること・できる
ことをどう使うか
生きて働く
知識・技能の習得
未知の状況にも対応できる
思考力・判断力・表現力等の育成
  これまでは、何を学ぶか、ということが多かったのですが、これからは何ができるか、知識を本当に使えるようになるかが大切です。そのために、どのように学ぶかです。
 何を学ぶかについては、教科書が適切に使用されれば可能になります。、もちろん供給されることでもある訳です。
 これからは、日々の授業の営みがクローズアップされることとなります。
 3つの柱が大事になるのですが、全ての教科がこの3つの柱の枠組みで整理されていきます。これまでは、教科によって枠組みが異なっていましたが、全体を通して共通化されます。全体として、見通しがしやすくなります。 
 アクティブラーニングについて、様々な意見があります。形骸化、一方的に偏ったものにならないようにしたいと考えています。高校では、授業改革に取り組もうとしています。
 生活科・総合的な学習の時間が基礎となっているととらえていいと思います。
 学習者主体、能動的に学ぶということです。まさに幼児教育こそ、アクティブラーニングです。主体的で対話的で深い学びです。
 ここでは、3つの視点が大事です。特に深いということを意識してほしいと思います。 

 資質・能力の育成と
主体的・対話的で深い学び(「アクティブラーニング」の視点)の関係(イメージ)(案)
◆「アクティブ・ラーニング」の3つの視点を明確化することで、授業やカリキュラムの改善に向けた取組を活性化することができる。これにより、知識・技能を生きて働くものとして習得することを含め、育成すべき資質・能力を身に付けるために必要な学習過程の質的改善を実現する。
◆資質・能力は相互に関連しており、例えば習得・活用・探究のプロセスにおいては、習得された知識・技能が思考・判断・表現において活用されるという一方通行の関係ではなく、思考・判断・表現を経て知識・技能が生きて働くものとして習得されたり、思考・判断・表現の中で、知識・技能が更新されたりすることも含む。
知識・技能
学びを人生や社会に生かそうとする学びに向かう力・人間性の涵養
思考力・判断力・表現力等
生きて働く知識・技能の習得 未知の状況にも対応できる思考力・判断力・表現力等の育成
学びに向かう力・人間性
※基礎的・基本的な知識・技能の習得に課題が見られる場合においても、「深い学び」の視点から学習内容の深い理解や動機づけにつなげたり、「主体的な学び」の視点から学びの興味や関心を引き出すことなどが重要である。
 対話的ということは、イメージが持ちやすいと思います。また、主体的ということも、なんとなくイメージできます。深いということは見えにくいですし、イメージしにくいと思います。ねらうことに向かっているのかどうか、適切に行わなければなりません。
 にぎやかに活動しているということが、本当に期待するものなのかどうかです。
 そこでは、学習過程の充実、特にプロセスが大事になります。各教科、プロセスを大事にしていくことになります。
 10年前に総合で、左のような図を示しました。賛否両論ありました。しかし、総合的な学習の時間について、国際的にも評価されてきています。学力がV字回復したのは総合の力とも言われています。
 ベーシックなものは、左の図のようなもので、インプット(内化)したものをアウトプット(外化)する中で、知識がとして残り、そして働いていくということなのですが、細かく見ていくとプロセスには3つの型があるのかもしれません。
 @は、課題を解決するプロセス。Aは、解釈し考えを形成するプロセス。?は構想し、創造するプロセスです。
 いいかえると、@理科・社会・総合系 A国語系 ?芸術系です。
 例えば生活科では、ワーキンググループにおいて、プロセスのモデルを考えました。
※(生活科・総合ワーキング部会生活科の学びのプロセスと育成すべき資質能力の関係(案))
(「思いや願いを持つ過程」「活動や体験をする過程」「感じる・考える過程」「表現する・行為する過程」)
 これは、一つのイメージです。
 アサガオの活動の「思いや願いを持つ過程」では「わー。きれいな花、私も育ててみたい。」と。
 「活動や体験をする過程」では、「葉っぱがだんだん大きくなってきたぞ。蔓も伸びてきた。毛も生えているぞ。」と。
 「感じる・考える過程」では、アサガオはどんな気持ちなのかな。私のおせわのことをどう思っているのかな。」と。
 さらに「表現する・行為する過程」では、「水をしっかりあげて、日の当たるところに置いておくと、大きく育ちます。毎日のお世話が大切です。私は毎日忘れずにお世話をすることができました。アサガオと一緒に私も大きくなりました。」というのです。
 このように体験の質を高めていきたいと思います。そうなると、その栽培を続ければいいのです。意見交換し、表現したり、比べたりしていくのです。
 これを典型的な形というと、批判が出てしまいます。プロセスは柔軟に変動するものとして考えていきたいと思います。また一体化できます。
 これはあくまでも、一つのイメージです。
 体験と表現は相互作用があります。体験を大切にしていくと、表現も豊かになります。これまでも「目標4」として入れてきました。生活科の教科目標は、@自分と自然とのかかわり A自分と社会とのかかわり B自分自身 C体験・表現 としてきました。これにより、先ほどのトライアングルも充実されてくると思います。
 全ての教科で目標が示されました。リードの部分は、3つの柱にそって3つ並んでいます。どの教科も同じです。昭和40年代の学習指導要領と同じ様な形です。この中で、見方・考え方というものが大事になります。そして、対象を捉えていく視点、考え方、枠組み、方法が示されています。
 生活科においては、自分との関わりが大切になります。例えば、アサガオを育てていく際に、自分としてどうなるのかということが大事になります。つまり、学習の精度を挙げていくということです。
 今回、探究のプロセスに合わせて資質・能力・態度の3つの柱に合わせて整理しているので、参考にしてほしいと思います。 

■生活科の教科目標(案)
 具体的な活動や体験を通して、身近な生活に育まれる見方・考え方を生かし、自立し生活を豊かにしていくために、次のような資質・能力を養うことする。

・活動や体験の過程において、自分自身、身近な人々、社会及び自然の特徴やよさ、それらの関わりに気付くとともに、生活上必要な習慣や技能を身に付ける。

・身近な人々、社会及び自然を自分との関わりで捉え、自分自身や自分の生活について考え表現する力を育成する。

・身近な人々、社会及び自然に自ら働きかけ、意欲や自信を持って学んだり生活を豊かにしようとする態度を育てる。

生活科の見方や考え方(たたき台)
(※見方、考え方については各ワーキンググループでそれぞれ検討中)
小学校中学年 社会

社会的事象の見方・考え方
総合的な学習の時間

探究的な見方・考え方
理科

自然の事物・現象についての見方や考え方
各教科等
位置や空間的な広がり、時期や時間の経過、事象相互、立場相互の関係に着目して、社会的事象を見出し、比較・分類したり総合したりして国民(人々の)生活と関連づけること 実社会や実生活の中から問を見いだし、よりよい課題解決に向けて、各教科等の特質に応じて育まれる見方や考え方を総合的に活用して、複数の事象を捉えて考えたり、一つの事象を多様な角度から捉えて考えたり、現実の文脈の中で物事を捉えて考えたり、自分自身の生き方と関連づけたりして捉えて考えたりしながら、物事の本質を探って見極めようとすること 自然の事物・現象について、主として量的・関係的、質的・実体的、多様性と共通性、時間的・空間的な視点で捉え、問題解決の過程を通して考えること
見方、考え方の成長
小学校低学年 生活科
生活科の特質に応じて育まれる見方・考え方

身近な人々、社会及び自然を自分との関わりの中で捉え、比較、分類、関連付け、試行、予測、工夫することなどを通して、自分自身や自分の生活について考えること

 また、総合的な学習の時間も3つの視点でかかれています。学習方法、探究活動と自分自身・探究活動と他者や社会、知識・技能です。
 そして、総合的な学習の目標も示されました。
■総合的な学習の目標(案)
【高等学校】
 探究の見方・考え方を働かせ、よりよく課題を解決し、自己の在り方生き方を考えることを通して、次のような資質・能力を育成する。
@課題(学習対象)に関する概念的知識を獲得し、課題の解決に必要な技能を身に付け、探究することの意義や価値を理解する。
A実社会や実生活の中から問いを見出し、自分で課題を立て、情報を集め、整理・分析して、まとめ・表現する力を育成する。
B主体的・協同的(協働的)課題を探究し、互いのよさを生かしながら、新たなな価値の創造やよりよい社会の実現に努めようとする態度を育てる。

【小・中学校】
 探究的な見方・考え方を働かせ、よりよく課題を解決し、自己の在り方生き方を考えることを通して、次のような資質・能力を育成する。
@課題(学習対象)に関する概念的知識を獲得し、課題の解決に必要な知識や技能を身に付け、探究的な学習のよさを理解する。
A実社会や実生活の中から問いを見出し、自分で課題を立て、情報を集め、整理・分析して、まとめ・表現する力を育成する。
B主体的・協同的(協働的)探究的な学習に取り組み、互いのよさを生かしながら、自ら社会に参画しようとする態度を育てる。
 これまでは上位下達の学習指導要領でした。しかし、今回は、議論の場を設けていきたいと考えています。
 授業でそうですが、学習者主体なのです。学習者を大事にしていかないといけないと思います。主体的に対話的に深い学びという中で、深い学びをどう深めていくかだと考えています。
 では、深い学びとはどのようなことでしょうか。
 生活科では、自分との関わりの中で捉え、比較・分類・関連付けるのです。対話の中には、教師との対話もあるかもしれません。伝え合ったといっても、いかに自分事にしていくか、ということです。
 総合においては、授業レベルで、探究のスパイラルにしていくかです。活動の意味や価値を明らかにしていくことだと思います。また単元レベルでもあると思います。メタ認知、自己評価ともつながっていくと思います。
  「秋となかよくなろう」という活動をしました。
 一枚目のカードでは、何を書いているのか、よくわかりません。教師は「この葉っぱでどんなことをしたのかな。」と何を書いたか、たずねます。すると、「葉っぱで山をつくったの。」「音がしていたよ」「気持ちがよかった」と、書いたことだけではわからなかったことを話してくれます。
 言葉かけで、クリアー化し、確かなものになっていくのです。
 単元のまとめでは、全く違うカードになっています。どんなことをしたのか、比較をしています。色の違い、緑の葉、枯れた葉。カードにも違いが出ています。形、色、状態も、詳細な描写に変わっています。春との比較もでています。色と状態と関連付けています。
 まさに個別の気付きから関連付けている様子をみとることができます。
 秋田市の小学校では、「町たんけん」の学習が行われていました。意図的に仕組まれていることがありました。授業では「町たんけん」の様子について、グループごとに自分たちのたんけんの様子をまとめていました。クイズ形式になっていたり、それぞれユニークなものでした。
 授業の終わりの方で、先生がグループごとの地図を中央に集めて、一つの地図にしました。
 自分の見えていたマップの世界が広くなりました。子どもたちからは大歓声。「アレー」「大発見」「ここはこことつながっていたんだ」などと新たな発見が広がりました。
 「このマークがみんなのをあわせるととても多かったなと思いました。」
 「ぜんぶあわせるとこんなに広いんだなと思いました。」
 「ぜんぶつなげたら はっけんしたことが こんなにあって びっくりしました」
 「ちずが合体して一つのちずになるんだんて思あなかったです。」
 「山工米こく(ぼくの家)近くにゆうほどうが2つあるのはしつていたけど、左のゆうほどうは青コースにつながっていたのだといるんだとしりました。」
 「つなげて長くなった時にびっくりしました。しらないお店もいっぱいあつたからいってみたいです。」
 授業によって空間認識を広げていくことになったのです。「山工米こく(ぼくの家)近くにゆうほどうが2つあるのはしつていたけど、左のゆうほどうは青コースにつながっていたのだといるんだとしりました。」とあるように、つながっているとは知らなかったのです。発見、気づきが次へとつながっているのです。
 戸部小学校の授業の様子です。
「最初は、基本として美味しいご飯の炊き方から考えていきたい。」
「おにぎりの作り方として握る方法以外の開発したい。」
「名物になるようなキャラクターのおにぎりをつくったらいいと思う。」
「キャラクターのおにぎりは反対。戸部地域には特別なキャラクターはないから。まずはおいしいおにぎりを作ることが先決。」
「地域の人が笑顔になるようなおにぎりを開発したい。」
「みんなも笑顔になると、私自身も楽しく感じるから賛成。地域の関わりを大切にしたい。」
「そうかキャラクターを考えるよりも戸部らしさが出る名物おにぎりのために、もう一回地域を調査したい。」
「でも名物おにぎりの名物ってどういうこと。」
「きっと地域のみんなが楽しんで、みんな元気になること。地域活性化とかいうでしょ。」
「それならまずは人とかかわることが大事なんじゃないかな。」
 おにぎりからどんなことを考えていくか、『名物になるようなキャラクターのおにぎり』といいます。とらえ方として、概念が豊かです。本気で自分なりに、対話的に主体的に学んでいます。
 すると、さらに概念が豊かになり、『それならまずは人とかかわることじゃないかな。』と、次の行為となって表れていきます。
 ニセコの倶知安小学校でのことです。
「もうちょっと考えてみようよ。」
「イトウを守るには、ダムを増やさないで、どう?」
「ちょっと待って。ちょっと待って。」
「じゃあ、川の環境を・・・。」
「川の環境をよくする?」
まとめ イトウを守るためにはダムをふやさない。川の環境をよくする
 イメージする力が大切だと思います。気を付けていることは、自然に高まることもあるが、見取りが重要ということです。教師の質が大事になるのではないかと思います。計画する段階で、見通すことが大事なのではないかと思います。
 深い学びといっても、対話的で主体的なものです。とはいえ、見えにくいものです。認識にかかわることです。頭の中が見えないといけません。
 いかに学びをみとれるか。幼児教育の皆さんは、それを大事にしています。幼児はカードを書くわけではありません。
表にでてこないものもあります。子どもの内面、思考を見取るのです。デザイナー的な働きでもあります。
 話を聞いたり、記録したり、子ども達を見取ってきました。大事なことは子どもの立場にたつか。学習者が力をつけるようにと見取るのです。いかに同じ目線になれるか。子どもの立場に立てるか、という事です。
 アサガオをもらった。最初は成長が悪かった。けれども何とか大きくなった。
 トラブルがでた気に力を発揮するのが、生活科といえます。
 
  では、次のカードを見てください。
 このカードには、「みずをあげられなかったカード」と書いてあります。
 「きのうみずをいっぱいあげたから、あさみたらしめってました。でもかんばんをたてました。」と書いてあります。
 このクラスでは、アサガオに水をあげると「かんばん」を立てることになっています。タイトルの前の「さみしい顔」を見てください。あげたかったけど、土が湿っていたのであげなかったというのです。1年生はアサガオを育てるというよりは、水をあげるのが楽しみなところがあります。子どもは水をやりたいのです。あげられなかったけれども「看板を立てた」とあります。だから寂しい顔のマークなのです。そんな中、土は力強く書いています。多面的に捉えることで、期待する姿を見取ることができるのです。この子は、アサガオについてよく見ています。
 当初、こちらでは具体的な子どもの姿として「アサガオのツルの成長に合わせて、支柱を立てている。」「天候や土の様子を見て、水やりをしている。」「暑い日や天候の悪い日には、植木鉢を動かしている。」「友だちのアサガオと比較しながら観察したり世話をしている」「世話の仕方を、人に聞いたり本で調べたりしている。」と考えました。こちらで考えたのとは違う姿かも知れませんが、小単元の目標である「アサガオの変化や成長について考え、あさがおの立場になって世話の仕方を工夫している」と言えます。
 やはり、見取る力が大切になります。規準、空間、時間で見ていくと、精度が高まります。知っている、意識しているという事が大事です。学びを価値づけていくのです。

 また、学びの場が受け身ではなく、能動的、主体的になることです。生活科・総合だけでなく、どの教科でも、そういう学び手でなければいけないと思います。
 見取ること、気づきの質が高まること、概念的な学びが大切です。
 同僚と仲良く、地域の人と仲良く、仕事をこえて仲良くなることが大事だと思います。それが潜在的なパワーとなります。主体的ということは、教師サイドの強引な授業でも、子どもが這い回るというものでもありません。質の高い教師の力が求められると思います。子どもの思い・願いを優先するものです。
 そして、これまでの一部の先生が知っている、暗黙知ではなく見えるものにしていきたいと思います。